しまうまのメモ帳

知的かつ霊的なスノッブであると同時に人類の味方でもある道、オタク的な世捨て人であると同時に正義を求める闘士でもある道を求めて

はじめに

日々の生活のなかで興味を抱いたことや、いまだ一つの考えにまとまらない頭のなかのぐじゃぐじゃを、そのまま吐き出すように記していきます。 なお、とくにことわることなく内容の変更や削除をおこなうことがありますが、ご了承ください。

自己啓発書を読み解く (2)

谷本の『キャリアポルノは人生の無駄だ』によれば、自己啓発書が書店の売れ筋コーナーの大部分を占領するようになったのは2005年くらいからのことだそうです*1。そのなかでも長年にわたりセンターの地位をキープしつづけた、いわば自己啓発書の世界での「絶…

竹田青嗣の現象学解釈を検証する (5)

前回われわれは、竹田のカント解釈について検討をおこない、〈正しさ〉を〈主観的確信の内における正しさ〉へと斬り縮めてしまう竹田現象学の立場が、カントの思想と相容れないのではないかという考えを提出しておきました。 われわれの考える〈正しさ〉は、…

竹田青嗣の現象学解釈を検証する (4)

竹田は、2000年以上におよぶ哲学の歴史を概観した『欲望論』(2019年3月現在、第2巻まで刊行)で、「本体」の観念が解体されたことが、哲学史上におけるもっとも重大な事件だったと論じています。そして、とくに重要な役割を果たした哲学者として、ニーチェ…

竹田青嗣の現象学解釈を検証する (3)

前回は、『純粋理性批判』第二版における「形而上学的演繹」の議論を中心的にとりあげ、純粋悟性認識の〈機能〉を解明するカントの議論をたどってみました。そこでは、純粋悟性認識の〈機能〉のさまざまなあり方を、判断表からの導出によって得られたカテゴ…

竹田青嗣の現象学解釈を検証する (2)

前回は、竹田の現象学解釈の問題を哲学史的な背景のもとでとらえなおすことをめざして、カント哲学における超越論的な問題領域の発見についての考察を開始しました。今回は、前回の議論を引き継ぎつつ、主として『純粋理性批判』の第二版におけるカントの議…

竹田青嗣の現象学解釈を検証する (1)

これまで、「竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く」というタイトルのもとで議論をおこなってきましたが、そこでわたくしがかねてより竹田現象学に対して抱いていた疑問の一端をごく簡単に示してみました。ただしそこでの議論は、具体的な例にそくしてなされ…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (9)

前回は、小浜とフェミニズムのあいだでなされた議論を手がかりにして、彼の実存的な立場が抱え込むことになる問題点を見定めてきました。そこでわれわれは、小浜の主張する実存的なエロス原理は、論議的な(diskursiv)意味における〈妥当性〉をもつことはでき…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (8)

前回は、竹田がフェミニズムからの問題提起に対してどのようなスタンスをとっていたのかということを見てきました。そこでのねらいは、具体的な局面を設定することで、ポストモダン思想などによる「先構成批判」に対して竹田がおこなっている反批判の問題点…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (7)

前回、竹田欲望論と岸田唯幻論の違いについて検討をおこなったところで、あくまでも「意識の水面」に定位しようとする竹田の立場が、現象学に対してくり返し投げかけられてきた「先構成批判」に対する竹田の反批判にも通じているのではないかと述べておきま…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (6)

前回は、竹田のハイデガー解釈を概観しながら、「欲望論」ないし「エロス論」と呼ばれる彼の立場の根幹にある考えについて検討しました。竹田は、こうした立場に基づく実存的な観点から、さまざまな問題について考察をおこなっています。そこで、ほんの一部…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (5)

「竹田現象学」ないし「竹田欲望論」と呼ばれている思想の構築にもっとも大きな影響のあった哲学者はいうまでもなくフッサールですが、ハイデガーもそれに劣らず重要な哲学者です。竹田は「フッサールが示した認識論上の限界点という現象学のモチーフを、最…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (4)

前回の最後で、竹田がフッサールに対する「先構成的批判」への反論を試みていたことに触れました。「先構成的批判」とは、還元によって確保される純粋意識は、いっさいの認識の絶対的な源泉なのではなく、それを可能にしている先行条件が存在するはずだとい…

自己啓発書を読み解く (1)

谷本真由美の『キャリアポルノは人生の無駄だ』は、自己啓発書にハマる人びとが陥っている問題を鋭く指摘した本です。 キャリアポルノは人生の無駄だ (朝日新書) 作者: 谷本真由美(@May_Roma) 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2013/06/13 メディア: …

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (3)

前回は、竹田のフッサール解釈について、とくにその「方法的独我論」という規定について、簡単に見てきました。今回も引きつづいて、竹田のフッサール解釈を概観することにします。なおその際、従来の現象学理解はひどい誤解に覆われていると竹田がくり返し…

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (2)

今回は、主として『現象学入門』(NHKブックス、1989年)によりつつ、彼の現象学解釈、とくに「現象学的還元」についての解釈を概観していくことにします。 現象学入門 (NHKブックス) 作者: 竹田青嗣 出版社/メーカー: 日本放送出版協会 発売日: 1989/06 …

竹田青嗣の現象学と欲望論を読み解く (1)

『現象学入門』(NHKブックス、1989年)や『ニーチェ入門』(ちくま新書、1994年)など、数多くの哲学の入門書を執筆している竹田青嗣は、難解な哲学の議論をわかりやすいことばに噛み砕いて説明することで多くの読者の支持を得ています。その一方で、彼…

サブカルチャー批評を読み解く (5)

前回は、『動物化するポストモダン』において東浩紀が意図的に「セクシュアリティ」の問題を回避していることに触れ、さらにササキバラ・ゴウの『〈美少女〉の現代史』を参照しながら、サブカルチャーにおける「セクシュアリティ」の問題について考察しまし…

サブカルチャー批評を読み解く (4)

現在から振り返ってみるとき、東浩紀の『動物化するポストモダン』はその後のサブカルチャー批評の隆盛の礎を築いた記念碑的な著作といえるのではないかと、わたくしは考えています。しかし、その後のサブカルチャー批評のなかで突っ込んで論じられることに…

サブカルチャー批評を読み解く (3)

前回につづいて、東浩紀の『動物化するポストモダン』の議論を簡単にたどっていきます。この本の第二章で東は「二つの疑問」を提出していました。今度は(2)の問いをめぐる東の議論を見ていくことにします。 前回も引用しましたが、ここでもう一度、東の掲…

サブカルチャー批評を読み解く (2)

以下では、『動物化するポストモダン』での東浩紀の主張を、簡単に振り返ってみたいと思います。 この本は三つの章で構成されていますが、中心となるのは第二章「データベース的動物」です。この章の冒頭で、東は「二つの疑問」を掲げています。 (1)ポス…

サブカルチャー批評を読み解く (1)

2001年に刊行された東浩紀の『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会』(講談社現代新書)は、刊行から14年が経った現在、どのように読まれうるのかということを、何回かに分けて考えてみたいと思っています。 動物化するポストモダン オタクから見…